私は普段から乗りなれた地下鉄に乗っている。時間は夜。
大きな駅に併設されたお店でどうしても買い物をしたいが為に今地下鉄でその駅へ向かっているらしい。私は心の中で「寝過ごさないように気を付けなきゃ。駅に到着したら速攻買い物を済ませて、終電までには帰ろう!」そう思っていた。
しばらくたつと、降りる駅の1駅前となった。私は「もうすぐだ。降りる為にそろそろ席を立っておこうかしら。」そう思い、車両のドア付近へと移動した。
しかし何かの間違いなのか、降りるはずの駅で車両は止まらずそのまま通り過ぎてしまった。「あれ?もしかしてミス?」と思ったが、よく考えれば何かのミスならば謝罪のアナウンスが流れるはず。しかし、放送が流れる事もなくそのまま車両は走り続けた。
私はソワソワする気持ちを抑えながらもう一度、空いた座席に座った。「何かおかしい。でも仕方がない…。このまま買い物をしてたら終電に間に合わないし、今日は買い物を諦めて次の駅に止まったら家へ帰ろう。」と、残念な気持ちになった。
が、次の駅もまたその次の駅も止まる事はなく、通過していく。
「これは本格的におかしい!」と強く思い、だんだんと「なんで?」と言う疑問が脳内をぐるぐる回る様になってきていた。周りにもおかしいと思っている人が居るはずだと乗客を見ると、サラリーマンやOL、そして学生…いろいろな人がいるのだが、洋服だけで顔が無い。
皆の顔は闇のような黒色をしている。そんな光景にも関わらず私は「銀河〇道999の車掌さんみたいだなぁ…。」なんて呑気に思ってしまった。
しかしこの状況について誰かに質問したかった私は、優しそうな人…と言っても顔は見えないので、優しそうな服を着たおそらく男性だろうと思われる闇に話しかけてみた。
「この車両おかしいですよね…。止まるはずの駅で止まってないですよね?」そう言うと、地の底から響いてくる様な声で「私達は、もう帰れないのです。」と答えられたのでした…。