No.21 流星群(ユメミタ)

グロテスクな表現があります。苦手な方はご注意ください。
夢の中の自分は知らない女の子と住んでいるようだ。女の子といっても大学生くらい。女の子と呼ぶ理由は、明るくて人懐っこくて、甘えたがりで、まるで子供のような行動をとるためである。茶髪でボブヘアーの似合うとても可愛い女の子だけれど、自分はその子に毎日振り回されることが嫌だった。
ある日、夢の中で目覚めてトイレに行こうとした。千鳥足で、世界がゆがむ。目も閉じそうだ。時刻は夕方と夜の間くらい。逢魔が時という言葉がぴったりだった。あまりの体の重さに、トイレ近くの部屋に置いてある簡易ベッドで、一度寝転ぶ。そのままトイレに行けば良いのに立っていられない。
このままもう一度眠ってしまおうか…。とおもったが、そこにアラーム時計がなかったので「それなら起きられないじゃないか。」と、少し焦りやめることにする。
なんとかもう一度起き上がり、廊下へ出ると、白いモヤが通った。ぶおっと、一瞬かなりの風圧を感じた。急に恐ろしくなる。何者かがぶつかったような感覚に震えながらも、なんとかトイレの隣にある洗面台の部屋についた。そこには洗濯機が置いてあり、横には見知らぬ白い犬が寝転んでいた。
ぱっと見、ヨークシャテリアとマルチーズをミックスし、大きくした感じだろうか。その毛は、体液かなにかで汚れており、真っ白とは程遠く、左目からは膿のようなものが見えた。クリーム色を極限まで薄めたようなゼリー状の膿が、べっとりと付いている。しかし、先程の白いモヤで恐怖を感じていた自分は迷いなくその子を撫でた。少し癒されたような気がした。
ふと尿意を思い出して、トイレへ駆け込む。トイレと言っても、中はボットン便所で、ドアの下に大きな隙間があった。用を足そうとした瞬間、一緒に住む女の子が帰宅した音が聞こえる。
「どこいるのー?」という声に「トイレ!」と答えると、その子はトイレのドアの前までやってきた。ドアの間からその子の足が見え、ぬふふと笑ったあと、身をかがめて、ドア下にある隙間から「ただいまー。」と手を振ってきた。
何していんだよと怒る自分に、「えー良いじゃーん!」と悪戯をする子供みたいに笑っている。眠気のせいで多少イラッとしていた自分は「やめろって。」と、用を足す前にトイレから出た。
「もう良い!外でトイレへ行く!」と、少し怒り口調でしたが、女の子は悪びれる様子もなく「あたしも一緒にいくー!」と腕を組んできた。
一歩外に出てしまえば、そこはスチームパンクの世界。ビルが立ち並び、夜景が煌めく。複数の建物からは煙が上がる。この建物も、いくつかの建物が合体し、繋がったような複雑な作りであった。壁には無数のパイプがある。
我が家は7階くらいだったが、外への扉を開けるとすぐにコンクリートと鉄骨のわたり廊下があり、その廊下は隣接する建物へと続く。家を出てすぐ左手がメイドカフェだった。メイドカフェに入ると「おかえりなさいませご主人様。」と声をかけられるが、こちらの顔を見て「あら!どうしたんですかぁ?」と少し驚かれる。
ちょっとトイレ借りにきただけだからと言うと、メイドさんは「なるほどです!」と笑った。どうやら、一緒に住む女の子とも、自分とも顔見知りのメイドで、店内にいる他のメイドさんとも顔見知りのような雰囲気だった。ご近所という事で関わりがあったのだろう。
店内にはお客もチラホラ見えた。純喫茶のような落ち着いた雰囲気で、内装は赤い絨毯に深いブラウンの木製家具で揃えられている。壁には大きなガラス窓もあった。店内を見渡していると、わざとらしく「ご主人様、お手洗いはこちらでーす♪」とメイドさんが後ろから肩に手を乗せてきて、そのままトイレへ案内される。やっとここで用を足した。
用を足して戻ると、メイドさんと女の子が話をしている。何を話ているのか聞いてみると「今日は、流星群がみられるんだってー!」と女の子は目を輝かせている。メイドさんも「私もこの後見に行きます!」とウキウキしている。
すると女の子が、「ねぇ!見にいこうよ!」と提案してきた。その頃には眠気も覚めており、「まあ…いいよ。」と返事をして、公園へ向かう。公園といっても、ビルの屋上にある人工的な公園。しかし、ビルの屋上というのを忘れそうなくらい緑が生い茂り、芝生もあるので結構人気だった。
今日は特に、素晴らしい流星群が見られるということで人が多く、子供から大人まで男女問わず今か今かと空を見上げていた。少しだけ出店もあり、小さなお祭り会場のようでもあった。隣で「まだかなー?」とはしゃぐ女の子を見て、自分自身もまだだろうかと少しだけ心躍った。
そうして出店を回ったり、時々空を見上げて時間を潰していると、先程のメイドさんが仕事を終えてやってきた。「先程はどうも。」と会釈をして他愛もない会話をしていると、メイドさんは「友達が来たので失礼しますね!」と、小走りで走っていった。
ちょうどその時、キラーんと夜空に流れ星が流れた。すごくはっきりした、大きな流れ星だった。「あっ流れ星だぞ!」「流星群はじまったな!」と周囲がざわつき、自分たちもその光景を見ていた。
しかし綺麗だと思う前に、ふと流れ星にしては近すぎる。そしてはっきり見えすぎている。先程までは星も少ない、黒い空だったのに何でだ?という疑問が浮かぶ。なんだろうこの違和感。自分の感想とは逆に、歓声をあげる周囲の人々。違和感は強くなっていった。
そんな時、大きな流れ星のように見えていた光からにゅるっとした触手が見えた。「なんだこれ。」と、口に出す前に、その触手は一気に大きくなり、まるで孵化をするような形で全貌をあらわにした。
体はマンタ。顔は鳥のようなアンバランスな姿で、体の下からは4本の長い触手が生えていた。大きさも上空にいるので正しい大きさはわかりづらいが、かなり大きい。星が流れるたび、その謎の生物は産まれる。
孵化をし終え、上空で触手を揺らしながら飛行するソレをみても、不思議と周囲も自分もパニックにはなっていなかった。どうやら、現実には存在しない不思議な生物というものは、この世界で普通に存在しており、流星群にちなんで行われたイベントの一つだと、皆が思っていた。
「なんだこのヘンテコな生き物は。」と笑うものもいれば、「可愛い!」というもの好きな人の声も聞こえた。だんだんと、その生き物は仲間同士で触手を繋ぎ合わせる。風船の束の形を想像すると分かりやすい。「なんだあれー!」と、子供が指をさした瞬間、繋がった触手の先端から光の粒が放たれた。それはまさに流れ星のよう。
小さな光が子供めがけて飛んだ。その光はチョンっと子供に当たったが、痛そうでもなく、「綺麗だね」と母親と喜んでいた。謎の生き物はそれからもランダムに、その光の粒を放ち、受けたものは周囲の人々と笑い合っていた。
が、次の瞬間。
初めに光が当たった子供の体が発火した。青い炎だった。ジュッという音と共に一瞬で溶けて子供は消えた。その光景に絶叫した母親の声をきっかけに、現場は騒然となった。あせって逃げようとするもの、光が当たり、先ほどまで喜んでいた人は恐怖に怯え、周囲に助けてくれと叫ぶ。次々青い炎があがっては一瞬で人が消える。
まさに地獄絵図。それでも触手から、光が放たれ続ける。そんな光景を見て「ああ、この光景が流星群なのか。我々が星なのか。」と、なんとも哲学的なことを考え、ふと隣にいた女の子を見た。彼女は怯えることもなく、謎の生き物をじっと見つめていた。いつもの子供のような無邪気さは消え、成人女性の真剣な顔つきで。
まるでこの状況を受け入れようとしているのか、それとも謎の生物に語りかけようとしているのか、はたまた狂気を帯びた流星群をただ見ているのか。その表情からは何も分からなかった。しかし周囲の絶叫に反し、自分はそんな凛とした女の子を見て、すごく綺麗だと思った。
その瞬間夢から覚めた。1時間ほどしか立っていなかったが、とても、とても長い夢を見た気がした。
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