No.55 下りの階段(男性・41歳)

悲しみ
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気がつくと、まるで天国のような場所にいた。白くて綺麗な階段の上に立っていた。どれくらいの高さかはわからないが、階段の途中だというのは感じ取れた。
天空へと続く真っ直ぐで白くて綺麗な階段。白い雲の中にいて、所々光が差し込み、光が差し込んでいる部分が黄金に輝いている。気温も寒くもなく暑くもなく、心地が良い。その階段を上がるのではなく、なんとなく下ってみたくなった。下るからといって、ネガティブな思いは無く、ただなんとなく。下へと続く階段も白くて綺麗で真っ直ぐだった。
ふと、下には扉があるような気がした。見えてはいないのだが、とても立派な扉だろうな思った。階段を一段ずつ下へ降りていく。すると、一段一段下へ降りるたびになぜか心も沈んできた。
立派な扉だろうと想像していたその扉も、形状が見えてくると、錆びていて重くて開ける際には「ギィーッ」と音がするような、古く大きな西洋風の扉だった。鍵はついているが、開けることは可能。扉の丸いとってに触れたとき、急に自分が身に着けていた服がボロボロになり、生地はひどく汚れた物に変わった。
直観で「開けてはいけない。」と思ったけれど、身体が扉を開けてしまう。やはり想像していたように「ギィーッ」という音を立てながら重い扉は開いた。扉の先も階段だった。同じ階段なのに、今まで下ってきた階段とはまるで違う。苔が生えていて湿気が強く、風通りが良くないのだろうと感じた。
引き返せば良いはずなのに、私は「降りて行かないといけない。」と、なぜかその時は強く思っていた。先が暗くてあまり見えない苔の生えた足元を気にしながら、壁に手をかけてソロソロと下るのがやっとだ。
一歩一歩階段を下りながら「この階段を下り切ったら、私の住む場所に戻らなくてはいけない。」と思った。この階段の下にあるのはきっと、誰も居ない孤独な場所。私が元々いた暗くて寂しい場所なのだろう。私はとても悲しい気持ちになり、目が覚めた。
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