No.41 人形型のオルゴール(ユメミタ)

悲しみ
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8歳くらいの姿になった私はデパートの屋上駐車場の車の中の後部座席にいた。私の隣には、以前誕生日にもらった「人形型のオルゴール」が置いてあった。
その人形型のオルゴールは、服の下についているネジを回すと、台座から上がくるくる回りながら、綺麗な音を奏でるもので、布でできていた。特別好きなわけでもなく、貰ったから所持している。そんな人形だった。オルゴールを鳴らしたのも、もの珍しさに数回だけだった。
私は、デパートへ両親と親戚と買い物に来ていたはずだが、なぜか車の中で一人ぼっちで、その人形と遊んでいた。外から聞こえる、当時はやっていた音楽の有線に懐かしさを感じながら、何とも虚しい、切ないそんな感情が襲ってきた。
すると、人形がこちらを振り返った。ネジを巻いていたっけ?と思い、急に怖くなった。黒い丸の目が私をじっと見つめ、私は動けずにいた。チャランチャランと人形からオルゴールが鳴り始める。どこかで聞いたことのある曲だが、思い出すことができない。
異様な光景に、恐怖を感じ車から出ようとしたが、なぜか出ることができず、大声で叫んだ。人形をちらっと見てみると、位置が変わっている。さっきまで置いてあった場所に無いのだ。前を向くと、人形はいた。首が180度回転し、こちらをまた見ている。オルゴールの音を奏でながら。
瞬きをすると、また人形は場所を変えていた。「なんでそんな事をするの!やめて!怖い!」と何度も叫んだ。そしてあまりの恐怖に涙を流した。すると、人形がふわりと浮かび、私の耳元に来た。
オルゴールの音と混じりながら、本当に小さな声で「友達になりたかった」と聞こえた。人形の方を振り向くと、人形は涙を流しながらゆっくりと1回転した。いつもの人形型のオルゴールのように、台座の上だけが一定のテンポで回る。
一周すると、涙も乾き、いつもと同じように無表情で音楽を奏でながらゆっくり回る。ただの人形型オルゴールに戻っていた。
私はこの人形を誕生日にいただいた時の事を思い出した。この人形のオルゴールをもらった時、私は心の中で「別にいらない」と思ってしまったと後悔した。そして、綺麗に飾ることも、ネジを巻いてあげることもしなかった。
もしかしたら、この人形は私と、この夢の中のように遊びたかったのかもしれない。ごめんね。本当にごめんね。今の私は、あの時のあなたみたいに、ひとりぼっちなのに。ごめんね。本当に最低だな私は。
そんな思いを持ち始めた頃、その人形はゆっくりと音楽を止めた。ゆっくりとこちらを向き、回転も止んだ。先ほどまで流していた恐怖の涙とは違う涙を流しながら、私は必死にその人形のネジを巻いた。しかし、いくらネジを巻いても、もう一度人形型オルゴールが動くことはなかった。
夢から覚めて、私は8歳ではなく、もう大人だったことに気がついた。その人形とは昔にお別れしてしまっていたが、こうして夢に出てきてくれた事は忘れないだろう。
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