ふと気が付くと、私は複数の扉に囲まれていた。
寝転がっていた私を円状に囲んでいるその扉は、おおよそ8個ほどはあるだろう。扉を良く見てみると、木製の扉や金属製の扉、プラスチック製の扉など材質が違うことが分かる。
夢の中の私はその中の扉から一つ選んで外の世界へ出ないといけないことを知っていた。私はなぜか一つの扉に魅力を感じる。それはどういう扉かというと、扉の回りに鎖がぐるぐると巻かれていて、どう頑張っても開きそうにない扉だ。
私はその鎖に手をかけて力ずくで引っ張り、何度も引きちぎろうとする。なぜその扉に執着しているのかは分からないが、他の扉には目もくれなかった。
10分ほど格闘しても全く鎖はほどける様子はなく、私はその場に座り込んだ。そうすると、私のちょうど後ろの扉ががちゃっと開いて、中から謎の老人が出てきた。
年齢はだいたい80歳くらいで西洋人のようだ。魔法使いのようなローブをかぶっていて、白い大きな髭をたくわえていた。「もういい、帰るぞ。早くこっちから来なさい」とその老人は私に語りかける。私は全くあやしがる様子も見せず、その老人について行く。扉の向こうは森林だった。
切り株に二人で腰かけて休息する。「お前にはまだ早かったろう。また来年開けてみると良いさ」と老人は私に対して助言をした。私はなぜか悔し涙がポロポロと流れてくるのを感じた。
なぜか分からないが、自分にとっての重要な任務を離せなかったという気持ちになり、自分のふがいなさに涙が止まらなくなった。