その日は、東京の親戚と両親と小学生の私、そしてまだ小さいよちよち歩きの1歳の弟とお花見に出かけていた。眩しいほどに天気が良く、キラキラ輝いている。桜がとても美しく、時間が止まっているような感覚。
東京の親戚は久々の私達との再開と、この美しい満開の桜にウキウキしていた。お花見をしている近くには電車が走っている。両親はまだ小さな弟に電車を見せたいと、踏切近くまでみんなでお散歩をした。
私は親戚と両親の他に、何か人なのか!?生き物なのか、気配を感じていた。決して悪いものではなく、温かくとても大きな気配だったが、その時目には見えなかった。とても心地良い感じがした。電車はまだ走っていないようで、弟は近くで歩きながら遊んでいた。珍しい桜があり、親戚と両親はその桜に夢中になっていた。私も近くに池があり、そこにいる鯉を眺めていた。
その時だった。電車が通る踏切の音がなった。私ははっとした。弟がいない。みんなも弟を見失っており、必死に探している。その時私は、線路をよちよち歩いている弟を見つけた。その後ろからは、電車が向かって来る。もう間に合わないと思った。みんなも気づいたが、離れた場所に居てどうにも出来なかった。もうだめだ、間に合わない。そう思った瞬間、電車と一緒に流れるように龍が現れた。
白と青の美しい龍が、電車と隣り合って飛んで行った。私は目を離すことが出来ず、そして動くことも出来なかった。電車が通り過ぎた後、龍もいなくなり、しばらく硬直していたが、私はすぐ正気を取り戻して、弟を探した。線路に弟は居なかった。電車に巻き込まれてしまったのか。私は絶望した。離れたところにいる親戚や両親もしゃがんで動けないでいた。
すると線路脇の桜の木の下の方から「キャッキャ」と幼児が笑う声が聞こえた。私は目を疑った。確かに弟がそこに居る。生きている。先ほどまで線路に居た弟が桜の下に移動して生きていた。私はすぐにあの電車と走り去った龍を思い出した。龍が助けてくれたのか!?桜の下に弟を移動させたのか、間違いない。
散歩した時から感じていた気配は、もしかしたらあの時見た龍だったのかもしれない。弟を守るために、ずっと付いて来てくれたに違いないと確信した。印象深い夢でずっと忘れられない。その後、夢の話を弟にすると、龍の存在を感じることがあると話してくれた。