季節の流行りのインフルエンザに罹って高熱を出した時の事です。寝込んだ私は夢の中で真っ白な部屋の中に座り込んでいました。眩しいまでに明るい部屋。光がどこから注がれているのか分かりませんが、真っ白です。
部屋の中には何も無く、恐らく外から見れば立方体のブロックの中にいるような状態なのでしょうが、私はその中でひとつの”作業”を課せられていました。
指先にはとてもとても小さな、人差し指の先に乗っかる程度の米粒サイズの真っ白な立方体を乗せており、それを真っ白な部屋の隅っこの床にひとつ置きます。その横にピッタリと同じ立方体をひとつ隙間無く置いて、またその横にひとつ、またその横にひとつ……。
その地道な”作業”で、私はこの真っ白な部屋の中をこの小さな立方体で隙間無く埋め尽くすという役目を持たされているのです。何故そんな事をさせられているのかは分かりませんが、私は一心不乱に立方体を置き続けます。
真っ白な部屋、真っ白で小さな立方体、どこが物体の境目かも分からなくなってくるようなその”作業”を、強迫観念にも似たものに突き動かされて続けます。無限にも思える時間それを続けて自分の膝、腰、腹、胸まで積み上がっていく小さな白い立方体でしたが、ふと上を見上げて見ると、いつの間にかさっきまで有ると持っていた天井が無いのです。いえ、無くなった訳ではなく、とても遠く、高いのです。
最初は横も縦も奥行きもすべて同じ長さの立方体の中に居ると思って続けていたのですが、いつの間にか天井に当たる部分がどんどん遠くなり、小さな立方体を積み上げるためのスペースが増えていきます。作業の終わりが見えません。まるで地獄にある賽の河原の石積みの気分です。
途方も無い絶望に飲み込まれ、気が狂いそうになって飛び起きました。夢ではありましたが、あの絶望的な気分はじっとりとした汗として体に張り付いて残っているようでした。
それからも、高熱を出すとまったく同じ夢を見ます。