No.16 走る背中を押されて(女性・30歳)

頭には白のハチマキ、服装はなぜかのランナースタイルです。もしかして、私はこれから走るのかな?なんて、思っていたら、「よぉい、スタート」の声とともにピストルが高らかに鳴り響きました。周囲にいた人達は皆一斉に軽快なスタートを切っていきます。そんな中、私はきょろきょろオタオタするばかりでちっとも前に進みません。
とはいえ、人混みの中の私は後ろから走ってくる多くの人に押されに押され、気がつけば、うまいこと走り出していました。一体、どうして、私はここで走っているのだろう。そんな疑問はすぐに消えてしまうくらい、私の参加しているマラソンは奇妙でした。
えっ?どんな風に奇妙かって?とにかく、自動車の教習所にあるようなS字のコースが立て続けに登場するのです。小さな円のようなコースなのに、いつまでも1周することはなく、ギリギリのところをカーブしてまた1周するかな?と思いきや、ギリギリのところでカーブがやってくるといった地味に酷な道が延々続くのです。
進んでクネって、地味に進んでクネって、気づけば、周りにいたランナー達の存在があるのかというくらいの静けさに包まれたのです。静寂をただただ、地味に進む私。思えば、人生のどんな瞬間も地味だったなと思う始末。
学生時代の文化祭では主役も友人に取られるし、付き合っていた彼氏も友人に奪われるし、私の人生はただ静かにあるがままに悔しさを受け入れ、ズルズル過ごしてしまった。とそんなことを、黙々と頭に描いている私の耳に誰かの声が聞こえてきました。
「頑張れ!!行け、もうすぐゴールだ!!」低い男性の声です。その声にはっと気が付くと、今まで聞こえていなかった、たくさんの歓声も赤いゴールテープさえも視界に飛び込んできたのです。意識を走りきることに向けた私は前にのめるようにただ走ったのです。そして、気持ちよく完走し「やった!走りきった!」と喜んだのも束の間、パッと目を覚ましたのでした。
本当に清々しいくらいの気持ちで目が覚め、夢なのか信じられないほど私は上気した朝を迎えたのでした。
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