気がつくと僕は電車の座席に座っていた。普通だったら窓を見ると外の景色が見えるはずなのに、窓からはなぜか青い空と雲が見えていた。そして窓から下を見下ろしてみると、そこには街があった。つまりこの電車は空中を走っているということだ。
電車の中にいる僕は、自分がどこに向かっているのかわからなくなってしまい、駅員を探して車両のなかを歩く。すると前から明らかに人間ではないけれど、人間に近い形のロボットがこちらに歩いてきた。
僕はそのロボットに対して「この電車はどこに向かっていますか?」と聞くと、ロボットは「あなたが決めるまでどこにも向かえません」と返答してきた。
どうやら僕が行き先を決定しないと電車はこの空をグルグルと回っているらしい。でも僕はどうしても自分かどこへ行きたいのか頭の中に思い浮かべることができなかった。
すると乗客の男性が私に、「マルガーニスに行きましょう。私が案内しますよ」と言ってきた。マルガーニスが何かはわからなかったが、なぜかその乗客のことは信頼できると思った僕はマルガーニスに向かうことにした。
その瞬間、乗っていた電車は急に進路を右に変えて、速度を速めて出発し始めた。恐らくマルガーニスへと進路を変えたのであろう。
先ほどの乗客は僕のとなりに座って、ずっと話し相手になってくれた。「あなた次第でこの電車は動きが変わりますからね。でも目的地を忘れちゃう人は結構多いものですよ」彼はどうやらこの電車について詳しいようだった。
うたた寝をしていると、どうやらいつのまにかマルガーニスに到着したらしい。隣の乗客に起こされて外に出てみると、そこはまるで宇宙空間のように漆黒におおわれていて、周りには何もない。僕はなぜか「やっと帰れた」と呟き、そのまま目を覚ますのであった。